空飛ぶナース（山本ルミ／新潮社）

「やっぱりこの仕事はやめられないね。感謝されるし、病気も治るしね」

世界を飛び回って活躍している日本人女性には、何となく共通点を感じます。まず、とにかく元気。遠距離のフライトが続いてもへこたれない。あとは誰の心にもスッと入ってくる人柄。それと、相手が突っ込まれたくないところをネチネチと突っ込んでこない心地のよさ。細かいことをいちいち追及しないで助けてくれるイメージがあります。
私も世界を飛び回る以前に、まずはそんな女性になれたらいいなと憧れますが、なかなか難しいものです。たいていの人が言葉も分からないままに飛び出して、今では多くの人に必要とされる存在になっています。あれこれと修羅場を乗り越えて醸し出される良さなのかもしれないです。
エスコート・ナースという、日本ではあまり馴染みのない職業を持つ著者が、海外へ病人を搬送したり、海外で病気になった日本人の帰国に付き添ったりした際のハプニングやアクシデント、勤務先の都内の病院で遭遇した珍体験を記した「空飛ぶナース」も、とにかく元気さとポジティブさに満ち溢れた奮闘記です。
世界のあちこちへ、現地で病気になった人を迎えに行く仕事。せっかくの観光地に1泊しただけであとは寝ずにエスコートしながらのフライト、空港では患者のチケット紛失やお土産購入に付き合わされて添乗員顔負けの走り回りっぷり。看護師として突っ走ってきた人だけに文章はちょっと取りとめのなさが否めないけれど、大変な仕事なはずなのに伝わってくるのは突き抜けるほどのポジティブさ。いやー元気いいな!! 最後に出てくる科白はいつも、冒頭に引用したような嬉しくなるようなフレーズなのです。
世界を飛び回る仕事がしたい、なんて簡単に口に出して言うよりも、こんなふうにポジティブに、目の前のお仕事に取り組みたいな、と大いに刺激を受けました。

空飛ぶナース

• 作者: 山本 ルミ
• 出版社/メーカー: 新潮社
• 発売日: 2007/11
• メディア: 単行本