人は仕事で磨かれる(丹羽宇一郎/文春文庫)文庫になったので再読 [読書]
「緊張を伴う仕事であればあるほど、そこから得られるものも大きいはずです。人間として、一回りも二回りも成長していくことができる。
『人は仕事で磨かれる』という真意は、ここにあるのです」
数年前、会社を辞める、と言って職場を騒がせたことがあります。転職活動して内定までもらって、すっかり辞める気になった割に、いざ上司に切り出してみると今の仕事もやっぱりちょっと捨てがたい。結局社長に慰留されて現在の職場に残ったわけですが、そこから俄然、仕事というのが面白くなってきました。
年齢的にも、社内での立場を考えても、「私、こんなところで何やってるんだろう…」などとクヨクヨ考えている場合ではない時期に差し掛かっていたこと、今の仕事も得意なことと苦手なことがクッキリ見えてきて、これから何を勉強すればいいのか分かってきたこと、などが理由としてあるかと思います。
そんな時期に読んだのがこの丹羽さんの本。かの伊藤忠商事で会長をしておられる方です。バブル崩壊後、商社がヤバイ状況になったとき、積極的な経営手腕で伊藤忠商事を復活させた凄い人物らしいのですが、例によってそんなこと知らないまま読み始めました。
何というかその、ご本人も「私は適当な性格」とおっしゃってますが、経営者然とした堅苦しさのない文章で親しみやすく、お若いころの体験などはちょっとした武勇伝みたいに面白く読ませていただきました。けど、やはり経営者としての苦労や判断についてはさすが、と思わせるところが多いです。
なるほどな、と思ったのは、ふだん考えていることはしつこいくらい繰り返し発言することだ、ということ。丹羽さんは社長就任の際、「クリーン、オネスト、ビューティフル」「清く、正しく、美しく」(←ん?)というキャッチフレーズを連発するのですが、これがもう社内にじっくりと浸透していて、丹羽会長といえばこのフレーズ、みたいになっているそう。調べてみると、伊藤忠って歴代の経営者が簡潔なキャッチフレーズを標榜してきているので企業文化かもしれないのですが、「あいつ、また言ってるよ」と思われたらしめたもの、それくらいしつこく言わないと浸透しない、という話は深く腑に落ちました。
あとはやはり、「人は仕事で磨かれる」というお話。仕事に対する報酬は、目に見えるお給料と、目に見えない自分の成長と、両方になって返ってくるのだそうです。「なぜ働くのか」という今の若者の質問に対する完全な答えになっているかはともかくとして、今の私には妙にしっくりくる、励ましのメッセージでした。
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