人生心得帖（松下幸之助／PHP研究所）

「成功とは、成功するまで続けることである」

松下電器が社名を「パナソニック」に変更すると聞いたとき、ちょっとびっくりした。
世界で名前の通じる企業になるために、創業者の名前からブランド名に移行する。普通だったら順当な社名変更なのかもしれないけれど、松下の場合は別格だと思っていた。ドイツ留学中に仲良くなった韓国人学生に、「日本人は皆きらい。例外は坂本竜馬と松下幸之助」と言われたインパクトが強く残っていて、松下の創業者・幸之助という人は経営者として全世界で有名で尊敬されている人物で、だからこそ松下は「マツシタ」として世界中で通用しているんじゃないの? …実際は違うようで、やはり世界企業としてやっていくためには世間の考えるブランドイメージと実像の間のギャップを修正していく必要があるようだ。
これまで興味はあっても読んだことのなかった松下幸之助という人物の著作。書店で目に留まったのをキッカケに読んでみた。

「人生心得帖」は、経営についてというよりも人生について、仕事についての考えを中心に語った本。すごく淡々とした文書ながら、ハッとさせられる記述に何度も邂逅した。
例えば、他人のアドバイスを流されずに聞くということ。自分で考えて堂々めぐりするよりも、客観的な意見として第三者にアドバイスをもらうことは大切。でも、その意見に流されるのではなく、聞いた意見を自分の中で咀嚼し、検証し、やっぱり最後の判断は自分でする。
仕事をしながら自分の天分を見極めること、人を信頼して協力すること、人生を生き切ること。深い洞察の中から見えてきたのは「柔軟であれ」というメッセージだったように思う。バリバリの起業家、経営者というイメージだった松下幸之助。でもああやって会社が大きくなった背景には、この柔軟性というのがあったのかな。ほかの著作も機会があったら読んでみたいと思います。

人生心得帖

• 作者: 松下 幸之助
• 出版社/メーカー: PHP研究所
• 発売日: 1984/01
• メディア: 単行本