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嫉妬の心は汚いか [その他見聞]

誰かが歌っているのを聴くと、それがどんなに上手な歌手であっても、
「私のほうがもっと上手に歌える」と心の隅で強く思っていたものでした。
口に出して言ったことはなかったけれど。
そんなふうに思うのはお行儀の悪いことだと思っていたから。
嫉妬だと分かっていたから。
ステージに立っていない自分。歌手じゃない自分。歌よりも優先すべきことがある自分。
聴く側に回ることを選んだのも自分。あんなふうにステージの上で、自らの存在を賭けて歌う人に、
どうやっても自分は太刀打ちできないと、本当はちゃんと知っていたから。

いつからだろう。「私にはあんなふうに上手には歌えないよなあ…」と、
あっさり判断を下すようになってしまったのは。
歌に対して全然ハングリーじゃない。それを自覚すると、とても寂しかった。

「4Stars」@青山劇場を聴いて来ました。
まあ嫉妬心も出てこないよね…という圧巻のメンバーではあったのですが、
ただただ「上手だなあ、すごいなあ」と感心するだけの自分に、途中で焦りを感じ始めてしまいました。

キムとジャスミンのレア・サロンガは歌に哲学があるみたいな人でした。
あの人の、歌の奥にある考え方は何なんだろう、あの人を突き動かすものは何なんだろう。
終演後、楽屋から出てきたレアに聞くと一言、「Joy」と仰ってました。肝に銘じます。

ファントムを歌ったラミン。あのナンバーをしっかり聴いたのは何年振りだろう。
歌詞が深くて甘くて切なくて優しくて、さめざめと涙しました。

シエラはアリエルの人。可愛くて何でもできるソプラノ、でも何となく、私は将来、
もっと違う彼女の歌を聴くような、聴きたいような気がすごくしました。
城田くんも同じ。大好きなミュージカルナンバーを伸び伸び歌う姿を見ながら、
もっと違うものを、もっと違うものを…と心が叫んでいました。

公演の内容としては、本音を言うとコーラスも欲しかったです。
ソロナンバーは確かに名曲揃いだけど、コーラスあってのミュージカルだと私は思うなあ。


カーテンコールに盛り上がる客席で、ひとり醒めた気分でささくれていました。
ずるいずるいずるいずるい。豊かな声があって、詩を歌う心があって、それを支える魂があって。
私にはそれがない。ずっともがいてるのに。欲しくて仕方ないのに。
心が嫉妬でぐちゃぐちゃで、でも燻っていた奥の方にやっと、小さな種火が灯ったような気もしました。

私の目指す歌は、レアのそれでもないし、シエラのそれでもないと思います。
でも、彼女たちの歌が私の心に火を点けてくれました。
歌の持つ力は強い。私は歌の持つ引力から逃れられない。
それで良いと思いました。聴きに行って良かったです。
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