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久々ブックレビュー「倒れるときは前のめり」(有川浩/角川書店) [読書]

声の大きい作家さんである。
…というのは比喩の話で、実際にテレビで拝見したトークは「もっと声張って話さんか~!!」と言いたくなるボリュームだったのですが。

とにかく文面から来る圧の強さというか、熱量のようなものがハンパない。
脊髄反射で全力疾走、倒れるときは前のめり、相手と素手で殴り合い、返り血を浴びる。
でも、俺が好きになった女はそういう奴だから仕方がない。

放っておけない、目が離せない、読まずにおれない作家、有川浩。
トンデモ設定や物議を醸すギリギリのところを書き、たまにネットで炎上しかけているのも見るけれど、書くことや伝えることにひたすらまっすぐな作家さん。

そんな有川浩さんがこれまでに様々な媒体に発表してきたエッセイと、事情により入手困難になっている「幻の」小説が1冊になりました。柚子の香りが漂ってきそうな装丁の本を、都内の書店を幾つもハシゴしてやっと入手。
(その2日後にサイン本が入るだなんて…なぜに店員さんは教えてくれなかったのだ)

やはり読書好きかつ有川ファンとしてたまらなかったのは、児玉清さんとのエピソードでした。
お二人のエピソードに触れるたび、「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉を思い出します。
このフレーズには続きがあって、「人は食べ物と、言葉とによって生きる」というような意味のことが書かれています。
言葉や本たちとの邂逅、読書がもたらす繋がりや奇跡が人をつくり、次の本をつくる。
そんなお二人の繋がりには、文庫「阪急電車」の解説文や、「図書館戦争」シリーズを通じて私たちも相乗りすることができます。

あとはもう、大音量でした。すごい圧の強さ(ほめてます)。
モノ書きとして、今を生きる社会参加者として、本読みとして、言わずにいられないことを全力で振り絞って書いているのが伝わってくる。
正しいか正しくないか、良いか良くないか、好きか好きじゃないか。そんなことに関係なく、私はこの人の作品が出るたび、手に取って読むのだと思います。普段なかなか向き合わない多種多様なテーマを、この人の作品は直球で投げかけてくるからです。その直球には抗えないし、提示される全力のメッセージに向き合っていたいから。それに、白か黒かの二元論で片付けることの脆さをこそ、この人の本から読者はメッセージとして受け取っているのだと思います。

そして何より、私に玄田隊長というヒーローをくださった方だからです。
「図書館戦争」シリーズに登場する玄田竜助という人物は、これまでの読書体験で邂逅した架空の人物の中でも、ぶっちぎりで好きなキャラクターになりました。
何より作戦立案が上手い。考えるより先に行動しているように見えて、実は慎重に石橋を叩いている。情に篤く、命を預け合う現場で部下たちから自然に信頼されている。元カノが好きで、本が好き。最近ついに「玄田隊長になりたい」と口走るようになった私をどうしてくれるのだ有川浩よ。

高知県のゆるキャラ、カツオ人間氏との意外な関係にびっくりしました。
読み終わってみると柚子湯に入りたいよりもカツオを食べたくなっていた残酷な読者です。サイン本ほしかったなあ…


倒れるときは前のめり

倒れるときは前のめり

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/27
  • メディア: 単行本


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